2017年10月30日月曜日

モノが売れない時代、これから消費は自己実現の為のものになる。



山口 周(著)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~』を読んでいます。

先日、「国内メーカーの携帯電話事業の縮小が続いている。」といニュースがありました。

スマホ国内勢の撤退相次ぐ 残るメーカーの生き残り策は

米アップルの「iPhone(アイフォーン)」に押され、独自性を出せないまま収益が悪化し、市場からの退出を余儀なくされている。

朝日新聞デジタル



本書の中でも、機能的な向上だけを目指して企業努力を続けていた会社の多くは「デザイン」という要素に着目した企業に大きく遅れをとり、場合によっては市場から退場させられる、と指摘していました。

かといって、牛丼業界のように低価格競争になってしまうと利益がでなくなるため、企業力低下の原因にもなりかねなません。

市場のライフサイクルの変化に伴って、消費者が求めるベネフィット=便益も変化していくということです。この便益は、市場の導入期から成熟期へと至る過程で、機能的便益、情緒的便益、自己実現的便益と変化していくことが、一般的に知られています。
 例えば、パソコンを考えてみるとイメージしやすい。
 最初は、記憶容量はどれくらいか、計算能力はどうかといった「機能」が、商品を選択する際の重要な基準になっていました。しかし、やがてこういった機能での差異がそれほど大きくなくなってくると、今度はデザインやブランドといった感性に訴える要素が、選択の大きな基準になってきます。



単純にパソコンを販売し、機能的重視にパフォーマンス改善を繰り返す消耗戦は終わり、誰に何を売っているのか、どんな客が喜ぶのか、感性に訴えるような手法に変化していきます。

デビッド・アーカーのベネフィット3分類

ブランドの神様と呼ばれるデビッド・アーカーの提唱したベネフィト=便益は、以下の3つに分類されます。

①「機能的便益」は、製品やサービスの機能にもとづく価値を意味します。

②「情緒的便益」は、安心感や爽快感、幸福感、クールなど、人間の感情に訴えるかける価値を意味します。

③「自己実現的便益」は、製品やサービスを所有、利用することによって実現される、何らかの自己表現に関わる価値を意味します。

私たちはもはやアップルという会社をIT企業と捉えるよりも、ファッションの会社だと考えた方がいいのかもしれません。なぜなら、アップルが提供している最も大きな価値は「アップル製品を使っている私」という自己実現欲求の充足であり、さらには「アップルを使っているあの人は、そのような人だ」という記号だからです。



日本のアウトドアメーカーsnow peak(スノーピーク)もアップルと同様に「snow peakを使っている私」という自己実現欲求のファンが多い印象があります。

アップル社の方々がsnow peakの燕三条の本社に見学にやってくる、ということもあったようですから、会社レベルで近いアイデンティティを持っていると認めているのかもしれません。

私は、アップルという会社の持つ本質的な強みは、ブランドに付随するストーリーと世界観にあると考えています。だからこそ、機能も外観も似たり寄ったりの製品が世に溢れるようになった現在にあってもなお、その競争力を失っていない。なぜなら、外観もテクノロジーも簡単にコピーすることが可能ですが、世界観とストーリーは決してコピーすることができないからです。



今後世界は3つ目の『自己実現的便益』のレッドオーシャンが広がると指摘していますが、アップルやsnow peakのような真似ができない独自のストーリーと世界観を構築する必要があるのです。

0 コメント:

コメントを投稿